初心者必見!アート鑑賞がもたらす魔法の力

美術鑑賞 芸術


前回は、『ゴッホ』という人物像に焦点を当てて、作品理解を深めてみました。

ゴッホという画家は、生前には、ほとんど評価されず、
生きている間に売れた作品は、たった1枚であったことも有名です。


それは寧ろ、ゴッホが描いていた画風は、次の新しい時代を先駆けていた斬新な表現方法であり、当時の人が、理解するには、まだ時代が早すぎたからでした。


夜のカフェテラス



どの時代も、新しいことを人々が受け入れるまでには、時間が、かかるものです。

しかし、近代美術だけでなく現代アート、そして美術表現は、どんどん表現方法が多様化しており、変化し続けています。


多種多様な作品が生まれる現代アートは、‟なんだかついていけない‟と戸惑ってしまう方も多く、鑑賞の入り口から、つまづいていると感じて、“芸術は分からない”という先入観から鑑賞することを楽しめずに、諦めてしまうという方も多いのではないでしょうか。


それは、なんだか寂しいものの気がします。。。


「アートって全然わからない。専門用語も多く、芸術は難解なイメージがある。」という言葉が聞こえてきそうなアート鑑賞初心者向けの方の声に応え、



今回は、美術館へ行く前に、少し知っているだけで作品が楽しめるポイントや専門用語の解説、近代絵画の時代の変遷を簡単にたどりながら、お話しさせていただこうと思います。

アート鑑賞は複雑じゃない!シンプルに楽しむための5ステップ

1STEP. 固定観念をすて、ただ「見る」ことに集中してみよう!

鑑賞の楽しみ方は、特に、すごく有名な人が作った作品であるとか、
権威性のあるものや何かに縛られるものではなく、
最初は、あまり知識も先入観も入れずに、ただその目の前の作品と対峙して、
何を描かれているのかを考えたり、感じたりすることが大切だと思います。


決して、有名な画家の作品だからといって、無理に素晴らしいと思わなきゃいけないと思う必要はありません。当時の人たちも、「この絵は、一体何上手なの?」「立体感ないじゃん」「リンゴ落ちちゃいそう>.<」と思っていたことは事実です。


現代アートは体感型の大規模な作品も多くあります。
ただ作品の世界観に浸ってみる。体感してみる。現実と非現実の狭間で魔法にかけられている感覚を、味わえるのも、ート鑑賞の醍醐味ですよね。



初めのうちは受け入れられない作品でも、長い間の賛否両論の末、強い風に当たってても、何故かびくともしない作品というものは、単に、上手い下手を超えた独自の旨味や深い味わい方、これまでの常識価値観を全く変えてしまうほど強いメッセージ性などがある作品だからです。

それが今日こんにちまで素晴らしい作品だと、語り継がれている理由なのでしょう。


まずは、凝り固まった頭を柔らかくしながら作品と向き合って見てみましょう!

2STEP. 五感を使って感じてみよう!

作品を見た時に、感じる感覚を大事にしてみてください。この絵は、温かみがある。とても情熱的。反対に、なんだか冷たい感じがする。緊迫した感じ、重々しい感じ、反対に、とても軽やかな感じがする。匂いや音を感じる。

幼稚な感じがするけれど、面白い作品だ。気持ちが明るく愉しくなる。うつうつした気分が解き放たれ、癒され心が穏やかになる感覚だ。反対に、この作品を見ると、すごく不愉快になる。不快な気持ちになる。怖くなる。

などと言語化できるのは、勿論いいのですが✍️(◔◡◔)
ただなんとなく好き、なんとなく嫌い。特に、なにも感じない(心動かされるものがなかった)。でも大丈夫です!o(^▽^)o

湧き上がってくる感情がどんなものであっても


頭で考えるのを、一旦止めて、そのまま受け取ってみてください。


しかし反対に、鑑賞した時に「何かを受け取りたくない」と感じたら、その‟拒否している自分自身の感覚が何なのか”を見つめてみましょう。それは、もしかしたら‘自分が今まで正しい’と思っていた考えや価値観が、作品を鑑賞することで「壊されてしまうような否定されている感覚」がする人もいるでしょう。


他にも、何故か分からないけれど、あの作品のことがすごく気になって、‘頭から離れないんだ’という作品もあるのでははないでしょうか。作品を見て感じた気持ちは、その後『作品を深く知る意欲』『自分自身を知ること』に繋がることがあります。


3STEP. 「なぜ?」と問いかけてみる~疑問を持つことが大事!~

どんな芸術鑑賞の達人でも、最初は「何故?」という疑問から『知る、学ぶ』が始まっているはず。疑問を持つことが、知りたい意欲に繋がります。

芸術作品のほとんどが、1度見ただけで、直感的、感覚的に理解できる人の方が少ないのではないでしょうか。

「この作品は、一体どんなところが凄いの?」「なんで、こういう色使いをしているの?」「この作品は、なぜアートなの?」ピカソのようにへんてこりん(?)や子どもが描いた絵画に見えるものがなぜ素晴らしい芸術なの!?そのだれもが素朴に思う疑問は、むしろ重要です。


その疑問の正体を、作品やアーティストのことを調べたり、時代背景などから少しずつ考えたりしていくことが、作品理解も深まっていくものです。


その作品が、何を伝えたいのか、よく分からない作品のように見えても、アーティストが作品として発表しているものは自己表現でもあり、鑑賞した人の心に何かが生まれることを予期して製作しているものです。


ただ感覚的にそのまま感じて世界観を味わうものもあれば、作品を通して、起きている社会問題に対して問題提起をして、疑問を投げかけて何かを伝えようとしている作品もあり、伝えたいことは様々です。

               山高帽と局
ルネ・マグリット

けれど、実はーティストが仕掛け迷宮の罠の沼の中にはまっているなんてこともあります。鑑賞初心者は、1つの作品に長く居すぎないよう、いろいろな作品を見るほうが勉強になると思います。

しかし「どうしてなのだろう?」と考えながら、何かに気付いた瞬間(◉_◉)分かった時が、芸術作品を鑑賞していく楽しみの一つであると、私は思います。

4STEP. 背景知識を知ろう!『文脈』を理解する

近代・現代美術は、『文脈』を理解していると、作品が、どういう過程を経て描かれ生まれたものであるかを予備知識として知っておくと、より作品を理解できます。背景知識は、重要なポイントです。


『文脈』とは『こういう流れのなかでこういう作品がたくさん生まれたんだ』『こういう出来事があったからこういった作品が生まれたのか』など、その作品の時代の前後に起きたことを理解することです。



戦争が起きた時代に、人々が苦しみから逃れたいと幻想を求めていたという背景があったからこそ「シュールレアリスム(超現実主義)」のような作品が多く生まれました。それは、「現実逃避」のようにアートに救いを求めていたから時代だからかもしれません。芸術は、その時代の情勢や当時の出来事にインスパイアされた作風が生まれることも多いので、時代背景や作品の背景を知ることが、理解を深めることは、言うまでもありません。

*シュールレアリスム(超現実主義)…キュビズムにも負けない20世紀の大きな芸術運動。幻想芸術とも呼ばれ、時に、人間に起きる不思議な夢や錯覚、無意識、幻覚などの世界を絵画に現した。現実的かつ非現実的でもある。シュールレアリスムを宣言したアンドレ・ブルトン曰く「超現実は、現実そのもののなかに含まれており、現実の上にも外にもあるのではない」と断言しています。サルバドール・ダリ、マグリット、ジョアン・ミロ

5STEP. 気にいった作品は、繰り返し見よう!時間をかけて向き合う。そして、作品について大いに語るべし!

気になった作品があれば、一度見るだけではなく、何度も見てみてください。同じアーティストの他の作品を見るのもとてもお勧めです。その芸術家の思想に触れたり、調べてみると共通しているところが見つかる筈です。そして、長い期間をかけて、年齢とともに分かってくる作品もあるでしょう。

一人で世界観を味わうのもよし。他者と語り合うことでもよし。感情を共有し話すことで、作品の理解も深まります。また、アート鑑賞をしたことがきっかけで、固定した考え方や常識に気付いて世の中に対する見方が変わったり、社会問題に関心を持ち、行動を起こす気持ちが生まれるかもしれません。


その作品から、何か哲学的テーマ、普遍的なメッセージを見つけ出せると、かなりの上級者です。


初心者が知っておくべき7つポイント~近代絵画の歴史~

1 カメラが発明される。忠実に描くことから解き放たれ、自由になる。

19世紀前半頃までは、西洋絵画は、まだ写真の技術がなかった時代に、時代の出来事を後世に遺していくため絵画は重要な歴史的資料でした。人物や出来事、宗教、神話などを伝えようとしているテーマを写実的に描く方が、リアルで分かりやすく伝えられたと思います。

画家の仕事は、貴族の為の肖像画や建物の宗教画などを頼まれて描くという職人として志す人も多かった。絵画や芸術は、一部の富裕層が愉しみという意識も高かった。


古いカメラ


しかし1840年以降から写真を撮る技術が生まれます。それまでのように絵画は記録として写真のように忠実に描く必要がなくなったのです。当時の描き方は、構図、色彩、遠近法など決まり事が多く定められ一点から見える遠近法や奥行きの出し方まで、様々な原則なルールに従って描かれていました。しかし、伝統的な古典絵画技法は、カメラの登場によって写した模倣のように描く必要はなくなります。

絵画には、絵画にしかできない新たな表現の可能性が生まれます。ここから近代絵画が大きく変化し進歩するようになるのですが…。

2 「古典芸術」に対する挑戦であり、芸術運動が起きた。

長年、受け継がれた伝統的な絵画技法は、*美術アカデミーという当時は絶対的な権威性のある格式のある美術学校のもとで鉄壁に守られていました。そのため新しいことをする画家たちは、なかなか初めは、受け入れてもらえませんでした。

新進気鋭の新しい芸術を模索している画家たちは、もっと自由に、自分にしか描けない絵画を描いていきたいと、立ち上がります。

写真のような切り取った景色ではなく、景色や人々の雰囲気や時間の移り変わりのその印象を描くのだと始まった印象派の画家たち。絵画は、見たままの色彩で描かなくていい、もっと自由な色彩で描くべきだとフォーヴィズムの画家。一つの視点から描くのではなく、いろんな角度から見たもの自由な構図で描きたいと。その構成力が画家の腕の見せ所だというキュビズム。それらの斬新な画風は、単なる新たな画風が生まれたということだけではありません。


印象派
日傘をさす女 

後期印象派
セザンヌ
後期印象派


新印象派(点描)
点描画
 

抽象絵画
抽象絵画
カンディンスキー



これまでの古い格式的な「古典芸術」に対する挑戦でした。伝統的、格式的な決まりごとの多い古典絵画に対する新しい芸術の風を起こすための芸術運動だったのです。

*美術アカデミー…当時、絶対的な権力があった伝統的な格式の高い美術学校。美術に関する教育や研究を行う機関

当時の*サロンでは著名な有名画家たちも次々に落選していた!>
当時は、現代のような公私の美術館や一般の市民ギャラリー的なものがほとんどなく、唯一のサロン(官展)が芸術家の発表の場でした。競争も熾烈で、セザンヌは、何回も落選していた。1863年には、あまりに多くの落選者がいたため、皇帝の計らいで敗者復活戦の『落選者会』が開かれた。そこにマネ、セザンヌ、ホイスラーなどが参加していたのは有名。審査の基準は、保守的、新しい試みには理解がなく、飽き足らない進歩的な芸術家は、独立路線を歩み始める。

*サロン…当時の芸術家の展覧会のこと。1737年以降ルーブル宮殿の一室のサロン・カレが会場となったことからそう呼ばれた。画家や彫刻家にとって、そこで評価されメダルを取ることが成功への一歩であった。

3 近代絵画において、多くのジャンルの絵画が生まれた理由

芸術運動は、一般社会の大衆の人たちが鑑賞し楽しむものへと意識も徐々に変わっていきます。絵を描くのを趣味にする日曜画家も増えていきます。

画家としての力量、オリジナリティのある作風が数多く生まれ、印象派、キュビズム、フォーヴィズム、抽象絵画、表現主義、シュールレアリスム等々。独創的で斬新な作風。新しい技法を使った作品が、古い格式に反発するように、新たな表現方法に挑む画家たちが、どんどん枝葉が派生していくように沢山生まれていきます。画家の個性や各々の色彩感覚、構図、表現、理念、力量が強かった時代。

後期印象派(セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン) ⇒新印象派(点描)⇒フォーヴィズム⇒ドイツ表現主義

後期印象派(セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン) ⇒キュビズム⇒抽象絵画⇒未来主義

※近代絵画の初期からですが、かなり簡略しました。実際は、もっと細かく枝分かれしています。

セザンヌが「近代絵画の父」と呼ばれるようになった理由とは!?

セザンヌの静物

古典絵画は、遠近法や構図、色彩などの描き方の決まりが厳しく規定されていました。18世紀後期は、新しい画風に対しての風当たりが強く、セザンヌの遠近法を無視した多視点から見た対象物を、自然の形態をいくつもの小さな面の集積として画面のなかで再構成して描くという描き方。写実とは言えないべたっとした色彩。当時の一般の人も、なかなか受け入れてもらえない画風でした。
しかし、その後、セザンヌに影響を受けたピカソやブラックらの画家たちが、多視点から見たものをキューブのように再構成するというキュビズムが生まれます。キュビズム以外にも*フォーヴィズム・抽象絵画などにも影響を与え、セザンヌが近代絵画を変えた人物として「近代絵画の父」と言われるようになりました。

*フォーヴィズム…対象物の色を見たままの色ではなく、画家の自由な色彩感覚や感性で描く描き方。マティスを始め、ルオー、ドラン、ヴラマンクなどが代表的。
*抽象絵画…具体的な対象物や景色や人などは描かず、画面上に色や形、線を配置し構成している絵画。見る人によって、様々な対象や具象に見えるところが抽象絵画の面白さ。初めて抽象絵画を描いたのはカンディンスキーと言われている。他、モンドリアン、ジョアン・ミロ、マーク・ロスコ、ジャクソン・ポロックなど。

4 「新しい時代にふさわしい新しい芸術を」「破壊と再生」

各々の画風を確立させ、新しい芸術を創っていく芸術運動は、画家の目的や理念、作品の表現のあり方が異なっていても、「伝統的な古い芸術に縛られない新しい前衛芸術を」という思いは、みな一致していました。みながそのままの模倣ではなく創造的な絵画を追及しました。

しかし、伝統的な画風や描き方しか認めない美術アカデミーや、芸術が一部の上流階級向けのものだという偏った価値観に対する反発運動であり、決して、美術アカデミーの教育を全て否定しているわけではありません。

伝統的な絵画の技術の良い所は残しつつ、積み上げて出来たものをまた壊し、また新たに再生する。「破壊と再生」を繰り返しながら、20世紀の芸術家たちは成長してきました。

たくさんの画家たちが起こした20世紀前半の芸術運動のおかげで、今日こんにちの美術館に、豊富な多種多様な芸術作品が並ぶようになったのですねƪ(˘⌣˘)ʃ もし、芸術運動が無く、古典絵画のような作品ばかりだったら、きっと寂しいと思います( ;∀;)


かつては、原始美術(アフリカ・エジプト)絵画は、児童、農民の芸術、絵画の教育を受けていない人が描いた(後のアウトサイダーアート)作品は、当時、芸術とは見なされることはありませんでした。それまでは、日の目を見られなかった作品が、その価値を見い出した画家によって、こんにちの現代美術にも影響を与えていると言えるでしょう。

5 芸術の価値観の変容。描き方だけでなく、アートの概念も変わっていく。

古典絵画は、歴史的な資料として、歴史上の人物の肖像画や出来事が宗教などを、テーマを基に描かれました。『何を描くか』がとても重要でした。

芸術運動が起こった19世紀後半から20世紀前半は、戦争や産業革命が起きた時代です。写真機が発明された以降は、絵画は、描き方『どう描くか』が、重要になっていきます。

その後、そもそも『アートの概念とは』、一体何だろう。。。

20世紀初頭に、マルセル・デュシャンが、便器を写真に撮った「泉」という作品を発表しました。当時、物議をよぶ事件とも言われたが、後々、アートの概念を覆す出来事となり、現代美術まで大きな影響を与えている。

デュシャンは、まるでいたずらっ子のような方法で「問題作品」として注目され、議論されることを意図して行ったことです。その後「アートとは?」の概念までが変わるほど、現代アートにまで影響を与える重要なメッセージが隠れていました。

6 第一次世界大戦から産業革命。そして、大量消費社会へ

戦後からの美術は、大きく変わっていきます。産業革命は、いい意味でも悪い意味でも、後の大量消費社会を暗示し、時代の変換期でした。その時代の変化を肯定的に受け入れた明るい未来を、感じさせる画風も生まれました。明るく工場や物質社会をキュビズム的に描いた未来志向のフェルナン・レジェ。

反対に、戦争で、多くの芸術作品が、消失しました。又、たくさんの芸術作品が、ナチスに押収されていきました。その中で平和への祈りを込めた芸術家たちの反戦運動の作品が生まれます。ピカソ『ゲルニカ』を始め、多くの反戦芸術を遺しています。岡本太郎『明日の神話』が代表的。

7 第二次世界大戦後、アートの市場が、ヨーロッパから徐々にアメリカへ。



アートマーケットが、アメリカに傾くようになり、また新たなジャンルが生まれていきます。絵の具を垂らして描くドリッピングアートの先駆者ジャクソン・ポロック、カラーフィールドペインティングのマーク・ロスコに代表される抽象表現主義、アンディ・ウオーフォルが大きく広めたポップアート、アメリカらしい大衆芸術をアートに変換させた芸術作品が生まれていきます。

20世紀前半から始まった描き方をいろいろ模索してきた画家の個性の時代から、筆を使わない新たな絵画技法。個性から離れてしまった大量生産のものまで。それは、時代が移り変わろうとしている予感がするものでした。


参照元:すぐわかる20世紀の美術 著)千足伸行 発行所)株式会社 東京美術

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