星の王子さまの物語が語る生きることの本当の意味

超難解!?かなり深いテーマの作品

サン=テグジュペリの「星の王子さま」は、間違いなく世界的名著と呼べる作品です。


児童文学でありながら、
とても難解な作品と言われています。

私のように一度、手にとってみても、
なんだか、よく意味が分からないと
挫折してしまう人も多い作品です。


一見、親しみやすい絵の表紙と
文章にふり仮名がついた
児童書のような雰囲気ですが、


実際は、「愛」や「人との絆」や「生と死」
普遍的な深いテーマを主題としています。

そのように哲学的なテーマを
主題に含まれた作品であるため、
本当の意味を解釈することは、
かなり難しいのです。

星の王子さま、禅を語る (ちくま文庫)  著者:重松宗育

他にも、仏教的なテーマも
含まれているという
解説本を出されている方もいます。

「大事なものは目には見えない」のはなぜか?を考えながら読んでみる

「大人になるとだんだん
大事なものが見えなくなる」

というのはどういうことなのでしょうか。

最初は、みな子どもだったのです。
まっさらな無垢な子どもでした。


けれど、生きていく間で、
世の中の常識
競争社会での基準など
外側から教えられた価値観
信じるようになっていきます。

そうして、世の中の価値観に合わせて
生きていると
自分の感じていること
だんだん見なくなってしまうのです。


むしろ、外側の基準に合わせて
生きている方が、
生きやすいのです。


しかし、本質を見るためには、
まずは、考えるより感じなければなりません


いつの間にか、
「掛けてしまっている眼鏡」や
「外側の価値観」

「固定観念」に、
自分で気づくところから始まります。


大人というのは、
何かはっきりとした明確なものを求めて、
自分自身の心の目で見ることよりも、

早く効率よく、答えや正解の方を、
先に見つけようとしてしまうのです。


一回きりで理解しようとするのではなく、
一度、子どもに戻って、

同じように作品の世界を体験したり、
王子さまが何を感じているのかを
空想してみてください。

長い期間を経て、
問いを持ちながら、
生きている間に
答えに出会うことがあります。


キャラクター人物の意味、
伝えようとしていることが分かった時に、


何かを発見したような喜びも、
自分の経験や人生と共に
より深く味わうことができるのが、
この作品の魅力です。


『星の王子さま』は、時々、開いてみては、
硬くなった頭を柔らかくしてくれる作品です。

星の王子さまのキャラクターたちの特徴や意味を探る

砂漠に落ちた男の子(ぼく)・・・絵描きになりたいと思っていたが、大人の何気ない言葉で夢を諦め、パイロットになった。ある日、飛行機の事故で砂漠に不時着する。
*サン=テグジュペリ自身も、飛行機事故でアフリカ大陸に不時着し、3日かかってエジプトまで歩き発見されたという。


解説

子どもの頃に抱いた夢や
やりたいことに
挑戦しようとしていたことを、
大人に話したとき、


親や周りから
言われた言葉で傷付いて
諦めてしまったという経験がある人は、
少なからずいるはずです。

人間は、何かがきっかけで、
夢を持つことができなくなって
しまうことがあります。


大人は、子どもが楽しんで
夢中でやっていることには、
あまり興味を示さず、


将来のことを考えて、
もっと算数や地理を
役に立つ勉強しなさい

などと、冷めるようなことを言うから、

主人公の「ぼく」も、
本心を大人には見せなくなったと言います。


「ぼく」が諦めたきっかけは、
現実に見えることしか話さない、

想像力の乏しいつまらない
大人の言葉だったという、

間接的な皮肉の意味が、
少し見下した感じで表現されています。

作品の冒頭部分なので、
1番重要な
「大事なことは目では見えない」
という物語の問題提起であり、

「大人の価値基準や
社会の常識の方を基準にしてはいけない」
という意味でもあります。


「世間の物差しや価値基準が、
  モノの本質を見えなくなってしまう」


という作者の大きなメッセージだと言えます。


それぞれの星に住むどこか変わった住人
人間をタイプ別に陥ってしまいがちな傾向のあるパーソナリティを極端に表している。


どこか身近にいそうであり、
自分の中にも、もしかしたらいるかもしれないキャラクターたちです。

王様 (命令をしたがる偉そうな人、威張っている人、権力者)
周りから褒め称えてほしいお調子者 (うぬぼれや、人気、見栄っ張り、八方美人)
吞んだくれ、吞み助 (甘い方に流れ欲望に溺れてしまう、快楽、食べ物、酒、ギャンブルなど)
仕事人間、計算ばかりしてる実業家 (財力、一つに価値に固執してしまう、データ・数字のみ重視)
点灯人 (真面目過ぎる人、~しなければならないという強迫観念)
地理学者 (周りや身近なことには興味がなく勉強ばかりしている、愛がない人)

そして、最後の7番目にきた地球という星には、
今まで出会ったこれらの住人すべてが住んでいるという。

これらの星の住人たちは、誇張されてはいるものの、どんな人にも必ず、存在する傾向があるパーソナリティを表しています。彼らをみて、何を感じましたか?

王子さまにとってのバラの存在とは・・・このバラの存在は、妻や恋人、
パートナー、好きな異性のことでしょう。


解釈 
※私個人の空想と解釈が含まれています

バラを象徴している恋人の存在は、
別れた恋人です。
一緒に暮らしていた
同棲していた相手です。

王子さまはバラのことを
愛していましたが、

決して、バラの性格は、
慎ましさとは反対の
主張するタイプの性格でした。

バラとの暮らしは、平穏ではなく
雨が降った時は、雨よけを、
手入れをしないと機嫌を損ね

毎日、王子くんに
気難しいことを言って困らせていました。

そんな暮らしに耐え兼ね、
バラの元から離れてしまうのです。

本当の恋人たちの関係性のようです。


どんなに好きな相手であっても、
常に一緒にいると互いに、
優しさに甘えたり、
わがままが出たり、
そうして段々と相手の嫌なところが
目について我慢が
積み重なってしまいます。


人と人との関係も、
相手と距離が近すぎる
何か衝突のようなこと
起きてしまうものです。


そして、王子さまは、
そんな毎日に疲れ、
恋人との距離を置くために、
バラの元から離れることにしました。


ただ、その別れは、
「永遠の別れ」を意味しています。


花は、別れる時には、
いつもみたいに、わがままを言わず、

「自分は大丈夫」
涙を見せないように
王子くんに別れを言いました。

しかし、別れた花の事を、
距離が離れても、
王子くんは、心の中の
1本のバラの存在(恋人)を、
なぜか、ずっと忘れることはできません。


旅をしている間に、
あのバラと、とてもよく似た花が
沢山ある光景を目にしました。

王子は衝撃を受けて泣いてしまいます。

住んでいた星には、
王子くんとたった一本のバラしか
いなかったからです。

けれど、その沢山のバラとの間には
何も思い出はなく、
同じなのは、
ただの「バラ」だという事実だけ

他のたくさんのバラの気持ちを
知ることはできません。

しかし、たった一本のバラの気持ちを、知っているのは
一緒にいた自分だけだと
気づいたのでした。

「バラへの責任がある」
自分には、大事なことに気付きます。

バラは、実は、か弱く
本当は一人では生きてはいけない。

そんなバラを
一人残してきてしまった事を悔い、
王子くんは、いたたまれない気持ちに
襲われるのでした。


「愛する人への責任」「愛とは、一体何か」重要なテーマです。

家族や子ども、妻やパートナー、一緒に暮らしている相手は、人生を共に生き、相手に影響を与えていくと共に責任もあるのです。

このバラの事からいっしょに考えてみてください。

キツネの存在・・・
人は、生まれてから沢山のいろんな人に出会いますが、

そのたくさんの出会う人の中で、
親友や恋人、大事な人になる存在
というのは、ほんの一握りひとにぎです。

キツネは、「人との関わり方」や
「友情」「人間同士の絆」
教えてくれる存在であるでしょう。

キツネは、友達のようでもあり、
人生の真理をなんでも
わかっている哲学者のようでもあります。

人間同士は、知り合う前は、
ただの他人同士です。

しかし、全くの赤の他人だった相手も、
共に過ごしたり、会話をしたり、
一緒に何かを体験したり、
少しづつ相手のことが分かっていく。

お互いに心の距離が縮まって
相手に徐々に親しみが湧いてくる。


人間同士の心の距離感は、
少しづつ縮まっていくものだということ。

キツネは、だんだんと
相手が大切な人になっていくことを
教えてくれます。

例えば、もし明日の3時、あなたに会えると思うと、2時からワクワクするんだと。

「前は、特に意味もない
2時という時間に、
意味ができるのは、
3時にあなたに会えるからだ」

哲学的で分かるような分からないような、
けれども、とても素敵なことを王子くんにもたくさん教えてくれました。

補足

哲学者ニーチェは、

「事実というものは存在しない。
存在するのは解釈だけである」

という言葉を遺しました。

人間は、同じものを見ていても、
一人ひとりがまったく違う
解釈があるということです。

事実とは、ただの現象のようなもの。

事実と真実とは違い、真実を人が、
正確に解釈することは不可能です。

大事なことは、事実ではなく、
そのことに対する
目の前にある現実を、
  どのように解釈するか。
ということを、キツネも教えてくれました。

あとがき

表紙や挿絵について

星の王子さま表紙(白)

私自身、最初に興味を持ち、
本屋さんで購入したきっかけは、
表紙でした。

この表紙のイラストに惹かれ、
手にしたのが出会いです。
いわゆるジャケ買いというものです。

きっとプロの挿し絵画家さんが
描いたのだろう
と思っていたら、

表紙も挿し絵も
サン=テグジュペリ本人が描いた
ということを知り、
トリプルな衝撃でした。

飛行士であり、
作家であり、
画家であったなんて
本当に、多才な人だったんですね。


絵画が好きだったので、
個人的に「JoanMiroジョアンミロ」
のような画家の雰囲気がしました、


なんとも不思議な感じが
この表紙のイラストに
吸い込まれるような気がしました。


きっとパイロットにならなかったら、
ジョアンミロのような偉大な画家
なっていたかもしれません(笑)。

人は、時間や経験を通して、プロセスの中で学んでいく。

星の王子さまも、経験をしながら、
一つ一つ体験を通して、
プロセスの中で学んでいきました。


住んでいた星から離れ、
様々な人に出会います。

出会いと別れを繰り返し、
また次の行き先(人生を選択)を決める。


あたらしい世界に出て、
出会いの中で学んだり、
狐に教わったり、
故郷のことを振り返っています。


きっと読んでいる私たちにも、
頭でこの作品を理解しようとはせずに、
生きている体験から、
本質を見ることを伝えたかったのでしょう。

「かつて子どもだったことを
忘れずにいる大人はいくらも居ない」


という言葉を残し、
この作品のテーマである
「大事なものは目では見えない」という
物事の本質を見ることの難しさ
を伝えています。


「曇りのない澄んだ心で見る」
ことの大切さと難しさを教えられる作品です。

この作品のクライマックスは、
愛する人のところへ戻るために
「死」を暗示させながらも、

決して、死は寂しいことではない
という言葉が
王子さまの最後のメッセージです。

王子さまが居なくなった
砂漠は、静まり、
そこには確かに王子さまがいた
という余韻を残して終わります。

星の王子さまラスト

「これが、ぼくにとっては、
この世の中で一ばん美しくって、
一ばんかなしい景色です。

~中略~王子さまが、

この地球の上にすがたを見せて、
それからまた、

姿を消したのは、ここなのです。」

一度、星の王子さまの
世界を体験してみてください。

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