「スオミの話をしよう」から考える女性の幸せな生き方

感想とレビュー

気持ちを明るくしてくれる元気になる作品

サスペンスコメディとは言え、
ほとんどサスペンス要素はない
と思って見たほうがいいです。

ですから、リアル感を求めている方には、
全くオススメしない映画です。

粗さや細かいところを
つつく感じのご意見は、
あまり耳に入れないことにして、
一人で観に行って堪能してきました。

見る人が作品に
求めていることによって、
作品に対する考えや満足度も
全く異なると思います。

私は、けっこう好きです!面白かったです。

舞台のように進んでいくところも、

私のように本物の舞台を
観たくても観に行けない
「舞台に敷居が高い人」にしたら、
映画で舞台の雰囲気も感じられるのは、
逆に新鮮でした。

設定から、リアルではない非日常であり
現実離れしたところから、
やり過ぎや、ぶっ飛んだ演出そして、
ツッコミたくなるところ満載なところも、

それも狙いなのではないかと思い、
最後まで楽しんで見られました。

設定からノンリアルなので、
セットのような小道具の一つ一つに
遊び心を感じる演出。

劇場のように会話劇が進んでいく
ドタバタしたところ
わざとらしさも一つ一つ、
みな何か心の中で必ず言いたくなる筈。

そういうところも、三谷作品なら
オープンに話せるのではないかと思います。

豪華キャストたちが、
キャリアもイメージも関係なく
必死にコミカルなダンスを、
真面目に踊るラストシーンは、
賛否や批評という枠を超えて、
役者さんたちのプロ根性や気迫
感じてしまうところです。

三谷作品の映画は、
エンターテインメントとして、
いつも気持ちを明るく元気になる作品
であることは間違いありません。

あらすじと解釈

〜「浅い」という意見が多かったので、私なりに深掘りしてみた〜
スオミの話しをしよう

母子家庭で育った主人公のスオミは、
子どもの頃から、
周りの大人が何を求めていることを分かり
その人の性格に合わせて自分を変えて、
その相手に順応するように成長する。

そんな風に、相手に合わせて、
自分を変え、その男性によって
七変化するスオミは、
5人のタイプが異なる男性と
結婚や離婚を繰り返し、
男性を頼りながら生きていく。

5人目の夫は肩書きは有名な詩人、大富豪の妻になっていた。

物語は、脚色され誇張した人物として描かれていますが、パートナーの好みに合わせたり、付き合う男性によって変化したりするスオミに、共感できる女性も、いるでしょう。

しかし、それは、スオミという女性が、男性や誰かに頼らずには、
生きていけない弱い女性であるため、「生きる術(すべ)」として
身に付いていったものだったでしょう。根底には愛が欲しかったのではないか。

しかし、どの男性にも良い面と欠陥な面があるため、スオミは一面しか見せず、自分の心も満たされることもなく、また次の男性へ自分の理想の世界を求めて、次々にパートナーを変えていくのだった。

しかし、スオミは付き合う人によって、ただ七変化するだけの薄っぺらい女性でしょうか。

傍にいて欲しい人は、女性が男性に何を求めているかも見えてきます。

反対に、男性も女性に対して、理想化した女性像をスオミに求めているという相互関係も見えます。

スオミが満たされない原因:外見的に惹きつける魅力があるスオミを、飾りのように、「トロフィーワイフ」と他人に自慢するためや男性優位にコントロールしたいという欲求が根底にはあります。
女性の社会的弱さや自立の難しさもテーマです。

大富豪の妻が誘拐か⁉はたまた失踪したのか⁉
主人公のスオミが姿を消えてしまうところから、物語は、展開していきます。

事件のために訪れた刑事(ともう一人の相棒)、大富豪の家に住む庭師
刑事の上司もスオミの元夫だ。

夫たちそれぞれのスオミの印象
と思い出の回想から、スオミの人物像が、
全く異なっていることが徐々に分かってくる。

そんな時、犯人からの電話を受け、
身代金が足りないという理由から、
2人目の夫のユーチューバーの実業家も現れ、スオミの元夫と現夫が5人すべて揃い、
劇場のような会話劇が始まる。

夫の性格の考察。スオミは、なぜ別れたのか。

元担任の教師(体育)
父親の愛情を知らないスオミにとって最初の夫は、家庭の内情も知り、全てを受けいれ理解し、父親のように傍でずっと支えてくれる安心する存在。

しかし、何でも全て聞き入れるので、主従関係のようになり、まるで年頃の反抗期の娘を持つ親のよう。

優しさも空気を読めない言動も、逆にスオミをイラつかせてしまいます。

しかし、冷たい態度をとりながら、苦手な料理もしてくれる母のような役割もできる魚山には、全面的に甘えている。


2ユーチューバーの実業家

次の夫は、年齢的にも若く、年が近い友達のような関係で、一緒に何かを楽しむことはできるけれど、若さ故の生意気さやプライドの高さ、上昇志向は、見栄っ張りで見た目ばかりの幼稚な面もあり、

スオミが頼れる相手ではなかっただろう。

しかし、見かけとは違い、実際は、将来を見据えて考えることもできる若者だった。

3人情味のある刑事

人間的な良さがあり、決して、人を疑わない純粋さは、最初は、新鮮だったのかもしれない。

大陸の女性が好きという夫の嗜好から結婚生活をずっと大きな声で中国語を話していたよう。そんな無理をし続けることも不可能。

そして、優しさも自信のなさからくる相手に言いたいことが言えなかったのでは。

刑事であるのに、全く疑わない度を越した純粋無垢さ。コスプレ趣味や嗜好、どんどん気持ち悪くなっていったであろう。

4刑事

非の打ち所がなく家事もこなす器用さと見た目もよく真面目で信頼できる人

けれど、細かいところに気が付き指図したがる上からの男は、一緒にいるのは、かなり窮屈で息苦しかったに違いない。

スオミの不器用なところを、どこか少し見下している。

その規律正しさを重んじる昔気質の男性の前では、不器用を演じずっと小声で話している。
そんなスオミに頼られること密かに喜んでいる。

5著名な詩人

ある詩人のファンだったスオミは、運転するタクシーに乗せたことから、憧れの職業の相手と結婚することになった。

かなり歳上だったので、前の夫のように細かいことは言わないが、しかし、詩人の富豪は、外のイメージとは違い、実は、詩人の本性はかなりケチだった。

スオミに自由に使えるお金も渡さず、社会から持たれるイメージや世間体ばかりを気にしている強欲な男だった。

包容力があり、自由にさせてくれるとスオミは不自由なく裕福な暮らしができると思っていたかもしれない。夢と現実とのギャップが別れの理由だろう。


親友の存在

常にスオミの傍にいて、スオミをサポートしてくれる高校時代からの親友がいた。

二人は共犯関係であり、親友はスオミを支えながら自身も職業を変え、次の計画を考えながら、共に生きている。

共にステップアップしているのか、ただ単に、スオミとは、切っても切れない存在なのか。

今回の誘拐事件も、スオミが5人目の夫と離婚をするために、詩人の付き人と計画したものだった。


スオミという名前は、フィンランド語で「フィンランド」を意味している。
自分が生まれた故郷に憧れを持っていたスオミは、自立の為の資金として「ヘルシンキ」に行きたい夢を叶える為に計画した誘拐事件だった。企てた誘拐計画は、成功しなかったが、スオミは、詩人と離婚し、また次の道に向かうのだった。


自立するという夢を抱きながら、
結局は、一人では生きていけないスオミ。

新たな6人目のパートナー(刑事の相棒)を支えにしながら生きていくのか。
または、過去の5人の元夫たちを時々、頼りにしながら生きていくのだろうか。

次はまた一体、
どんなスオミが現れるであろう。

幸せや理想は、追い求めるものだろうか。

何を目的にヘルシンキに行くのか、自分のルーツを探すために行くのか。また、ヘルシンキに自分の理想の幸せがあると思っているからだろうか。そんなスオミの理想探しの生き方は、永遠に続くのかもしれない。

キャストについての感想

役者のイメージと異なる一面を引き出す三谷作品

三谷幸喜作品といえば、
「役者という仕事の範囲」の
どこかイメージ優勢的なところを、

子どものようないたずら心からか、
全くイメージと異なることを
させるのが好きな監督だろう。

しかし、
新しい面を引き出し、
役者さんに親近感を感じて、
観客の距離感を近付けるように
演出しているようにも感じる。


今回の作品も、
この役者さん、“こんな事もするんだ”
みたいな驚きがたくさんあって
楽しいエンターテインメント作品だろう。

映画は、詳しくないので、
評論するつもりは、なく
三谷監督の観客に対する
サービス精神を存分に味わえた作品だった。

そして、スオミには、圧倒的な華があって、
男性を惹きつける魅力。
例え、どんなことをしても憎めない可愛さがあるのは、長澤さん以外いないでしょう。

一番好きなのは、断トツ、
元教師のときに現れるスオミでした。

なんでも聞き入れてくれる先生には、
他の男性には気を使い言えないことも、
女生徒のようにツインテールになれば、
なんでも言いたいことが言えるのかと
ツボに入ってしまいました。

他にも、個人的には、5人目の夫、
寒川しずお役の坂東彌十郎さんが、
素晴らしかった。
誠に、失礼ながら、この作品を
鑑賞するまで存じ上げませんでした。

三谷作品は、現代社会の動向とは、
むしろ逆方向に、向かっています。

冷やかさ面がなく、
アナログなところを全面に出し、
全くスマートではないところが魅力です。


どこか人と人との関係性が
薄まっていくようなネットワーク上の
コミュニティ中心になっている現代社会。

完璧だと思っている人間を、
どこか滑稽に描き、悲哀も笑いに変えながら、いつも寒くなってしまった心や身体を
温めてくれるような「笑い」を届けてくれる。


どこか三谷作品には、いつも
「人間愛」を感じずにはいられません。

補足:ユング心理学のペルソナ

スオミの外的な性格の特徴は、実際には、誰にでもあるものです。

映画では、誇張して描かれていますが、

『人には外的な性格と言われる「ペルソナ」というものを誰もが持っている』
ということをユングという心理学者が、
提唱しました。

社会(職場や学校)の中にいる時の自分。家族といる時の自分。恋人といる時の自分。

ペルソナ

人間は、社会的な役割や周囲との関係を
上手く円滑に保つために、
その「ペルソナ」がないと、
社会でも家庭でも上手く順応して生きていくことができません。

「仕事の役割」「父親としての役割」
「母親としての役割」等々
人間には様々な役割があるからです。

その「外の自分」と「内の中にいる自分」との
バランスを保つことが大事だと言います。

その内と外の自分が、
なるべく乖離しないようにすることが、
生きやすくなるのだと言います。

※ペルソナ・・・人間が、環境に適応するために作る
外的な性格や人格。心理学では外向きの(表面的な)人格

結論:スオミは、賢い女性です。この世に全く同じ人間は、居ないのに、どんな人にも全く同じように接してしまう人は、本当に賢いとは言えないのではないでしょうか。

かつての有名なマリリン・モンローは、実は少し馬鹿を演じていたという。スオミは、男性が女性に何を求めているかをちゃんと分かっている女性です。

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